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サロンワークのみならず雑誌や広告、コレクションなどで幅広く活動を続けるかたわら、

天然成分から作られたオリジナルのヘアケア製品を開発するなど、長年オーガニックにこだわり続けている「Twiggy」の松浦氏。
ヘアサロンをオープンしてから20年を迎えた今、彼女には美容業界に向けて伝えたい強いメッセージがあるという。その熱い想いについて尋ねた。

大量生産のヘアスタイルはもういらない。

——ツイギーは10月でちょうど20周年。お祝いのパーティーでは、お客さまやさまざまな業界からたくさんの方が駆けつけてこられ、ツイギーというスタイルがより一層確立されたように感じました。

お客さまをはじめ、20年間お世話になった方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。人とのつながりは私にとって大きな財産。何よりもこのつながりを大切にして、20年間仕事をしてきました。ただ残念ながら、日本の美容業界はこれまで、こうした精神的な豊かさよりも物質的な豊かさを求めてきたように思います。なかには、物質的な懐の温かさのために美容業を続けている人もいて、こうした人たちに私の言葉は届かないかもしれないけれど、私はできれば今の美容業界を変えていきたい。それが私の最終的な目標でもあります。
美容師はもともと手を使う職業ですが、誰もがその手にはものすごいパワーを秘めています。たとえば、相手のケガを本当に心から治してあげたいと思って手を握ると、そのケガは治ると言われています。ただし、その心に邪念が少しでも入ると、体の中から流れるパワーが滞ってしまうのだそう。大切なのは心の問題だということ。そして今の美容業界に欠けているのは、その心の部分なのかもしれません。

——具体的にはどのようなことなのでしょうか?

とりあえずマニュアル通りにできる美容師でいいからたくさん育てようという考え方では、出来上がるスタイルはみな画一的なものになってしまいます。たとえば、一人ひとり頭や顔の形、毛質も異なりますから、本来は同じアシメントリーのボブでも、この人のアシメントリーとこの人のアシメントリーでは違って当然のはず。にもかかわらず、出来上がってくるスタイルはコピー製品のように、みごとにみな同じ。これが美容業界の現状です。
私は20年間活動してきた中でずっと気になっていたことがあります。それはヘアカタログの制作です。ヘアカタログによってヘアスタイルの大量生産が増え、全国的にはおしゃれ化は進んだと思いますが、個性は減ったと思います。ヘアカタログではヘアスタイルの画像は止まったまま。でも実際は、風も吹けば動きもあるはず。本当のカットラインを見せたいのであれば、動画にすべきですね。今後は動画という手段が良いと思います。もっとリアルで・・・。最近はネットマガジンの時代に入ったことだし・・・。
人の真似をするのはもう十分。誰かに似ているということに喜びを感じるのはもうやめて。セレブの誰々さんの真似をするのではなく、「あの人のようにステキな空気感」を作るためのお手伝いをすることが、私たち美容師の仕事なのです。それにはヘアスタイル作りの原点に戻ること、「その人らしさ」を見つけてあげることです。そして、その価値観を大切に持ち続けながらも、ヘアスタイルの提案は常に変えていくという姿勢が大事。「今年のトレンドはこのスタイルですよ」ではなく、「あなたは今年これをやったから来年はこれにしましょうよ」と、お客さま一人ひとりとクロスしていくことが大切なのだと思います。

——なるほど。確かにボブスタイルが流行ると、みな一斉にボブになるし、美容師さんもそれをすすめますよね。

そう、まさに美容師の責任だと思います。最近、安いけれど質の悪いカシミヤの服が増えています。なぜ“上質”にこだわらないの?と言いたい。これからはもっと上質にこだわるべき時代なのに。美容室も同じです。もっと一人ひとりのお客さまの価値観を知った上でアドバイスをしていかなければ。まずはお客さまに、何に満足して何に満足しなかったのか、この店に来てこれからの自分のスタイルや髪質が見えたのか、それを聞いてほしい。そして、髪質によってデザインの幅が広がるのを知っていながら、美容室がお客さまの髪を傷めて、薄くして、誰にでも同じような提案をして、それでいいのか、と自分自身に問いただしてほしい。オーガニックのプロダクツを使っているとか、地球環境に貢献するとか、そういうこと以前に、お客さまに対する思いやり、人に対する思いやりの問題なのです。

原点回帰から生まれる本物のものづくり。

——松浦さんにはgrassroots3号でも、ライフワークである有機米作りについてお話を伺いました。20年前からオーガニックにこだわり続けている松浦さんは昨年、天然成分から作られたオリジナルのプロダクツを開発されましたが、そのシリーズにさらに新しいアイテムが誕生したそうですね。

髪の本当の美しさとは、生き生きとした心や体とつながっています。そして心と体の美しさは、私たちが生きるこの自然界が健康であることにもつながっています。ですから20年前からずっと、体や地球環境に配慮しながら、自然や私たち自身が本来持っている生命力を内側から喜びとして感じることができるヘアケア製品をつくりたい…、そう思い続けてきました。そうして生まれたのが“Twiggy your sanctuary”です。シャンプー、トリートメント、アウトバス用品のシリーズで、植物由来の成分だけではなく、魚や羊の毛からとれるコラーゲンやケラチンなど動物由来の成分も配合され、トウモロコシからできたバイオマスボトルを使用しています。
twiggy productsそして今回、“Epicurean”シリーズの第一弾として、植物由来の原料を配合したミストスプレーと、生薬にこだわったヘアトニックを発売しました。生薬とハーブのコラボレーションにより育毛や髪質改善にパワフルに効くヘアトニックは、育毛のことだけを30年間考えてこられた研究家の方との出会いから誕生したものです。昨年発売したシリーズ同様、人とのつながりがあって、想いを共にし、そこからカタチになって生まれました。

——プライベートブランドのヘアケア製品を出している美容室も増えていますね。

たぶん美容師さんが作るプロダクツですから、それぞれ素晴らしいものなのでしょう。ただ、私がプロダクツを作ったのは誰かから頼まれたわけではないし、お金を儲けるためだけでもない。自分自身が本物の商品を作りたかったから。そして自分自身がそれを使いたかったから。欲張りだけど頭の中に正しい知識を持ち、「楽しい、気持ちいい!」と思えることが一番だと思います。それがその人の快楽(満足)になってほしい。
一瞬一瞬を切り取りながら進んできたのは戦後から2000年まで。2000年以降、私たちがやらなくちゃいけないのは、原点に返って積み重ねること。自分自身ゆるがない気持ちを持つことが、自分の自信につながります。自分が自分に嘘をついていたら、自分を認めることができないし、ましてや人から認めてもらえるわけがない。
日本人はおかしなもので、お洒落なもの、新しいものへの傾き方がすごいですよね。まるでセール品にたかるかのように。そうではなくて、「あの人のスタイルって変わらないね」と言われるようなスタイルを持つことこそが大事なんだと思います。私はツイギーを通して、自分が作ったプロダクツを通して、また私自身の生きざまを通して、若いスタッフや子供たち、次の世代に、メッセンジャーとしていろんなことを伝え続けていきたいのです。「あの人のスタイルって変わらない」は、ヘアスタイルをチェンジしないということの意味では決してないことも・・・。


松浦 美穂 氏 Miho Matsuura
1988年に渡英。帰国後にヘアサロン「ツイギー」をオープン。サロンワーク以外にもヘアスタイリストとして活動し、広告撮影やニューヨーク及びロンドンコレクションのバックステージやヘアショーのイベントなど、活動の場を広げる。2007年には「ツイギー」を神宮前に移転。ヘアスタイル&カラーリング、ヘアスパ、ネイル、ファッションまでをトータルビューティサロンとして提案している。現在、本誌にてコラムを連載中。

http://www.twiggy.co.jp

(グラスルーツ 編集部)

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