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今回のインタビューにあたり、渋谷と原宿でサロンを展開している「ヘブンス」の小松 敦氏が選んだグリーンな場所とは、自然豊かな山でも海でもない、東京のど真ん中だった…。

東京都中央区の隅田川下流にある佃島は、路地を活かした商店街と高層マンションが程よく調和して、

古い街並みと新しい都市空間が活力のある街を形成している。そんな街を背景に語ってもらった小松氏が考える“グリーン”とは…?

 

古いものと新しいものを融合して、生き続ける街。

——佃島を訪れて初めて、小松さんがこの街を選んだ理由が分かるような気がしました。近代的な高層ビルの足元に、江戸文化の名残りを残す路地が広がるこの街は、人々の暮らしが息づいているように感じます。何よりゴミがほとんど落ちていないことに驚きました。

そうなんですよ。ここまでクリーンに維持できるのが不思議なくらい、街がキレイなんです。これは街のチカラだと思います。昔から家の前や近所をホウキではいたり、通りがかった人に挨拶したり、この街の人たちはそれが当たり前のように育ってきた。佃煮屋のおばあさんも笑顔ですごく感じがいい。江戸の町ってこんなふうだったんじゃないのかな、と思うぐらい、人の情けやつながりが残っています。京都の街も似ていますが、どちらかというと観光という産業が街並みを維持してきた感じ。佃島は住んでいる人が少しずつ積み上げて、作り上げてきたものだと思います。
しかも高層マンションができて、新しい人がたくさん移り住んできています。昨日引っ越してきた人もいるわけですよ。それでもこの環境を維持できるのは、街のチカラです。新しく移り住んだ人にも街を守ろうと意識させる何かが、この佃島にはあると思います。「街をキレイにしよう!」なんていう張り紙がなくても、自然に街づくりを意識できる。路地文化など守るべき古いものは守りつつ、新しいものも受け入れる素養があるから、この街はただキレイなだけではなく、息づいているように感じられるのだと思います。

——ちょっと視点を変えてみると、都会の真ん中にもグリーンな場所はたくさんありますね。

東京から車を少し走らせれば、山や海などの自然に触れ合うこともできます。そういう場所でグリーンを語るのもいいけれど、僕はあえてこの佃島をクローズアップしたかった。それに東京だって案外、捨てたもんじゃない。ビルの周りには樹木が植えられているし、街路樹なども含めて緑は結構多いと思います。都会は都会なりに頑張っているんです。しかも東京には、いろんな頭脳が集まっているし、問題意識の高い人が多い。これからの世代のための街づくりはすでに始まっていると思いますよ。もしかしたら100年後の東京は、古い歴史を守りつつも新しいものを受け入れて、その中で豊かな環境が育つ素晴らしい街になっているかもしれません。いえ、ぜひそうなってほしいですね。それが、街が“発展している”“生きている”ということなのだと思います。

生活者や企業のさまざまな思いが支える街づくり。

——都心の企業も、ビルの壁面緑化や屋上緑化に努めたり、グリーンな活動を始めるところが増えています。

そう、実はグリーンを考えるとき、企業の力や経済の発展は必要不可欠なんです。経済と環境は真逆のように思えるけれど、企業の力なくして都会のグリーンは考えられない。ボランティアや個人の力だけでは無理があります。企業だけではなく、メディアやNPO、NGOなどの団体、そして生活者が連携して初めて、大きなチカラになっていくのだと思います。
もちろん企業の中には、コスト削減など自社の利益を追求するためにグリーンなアクションを起こしているところもあるでしょう。でも、それはそれでいいんです。たとえ目的が利益であっても、結果的に環境に良い方向に向かうことができれば、それでいい。たとえば、若い人の場合、グリーンへのキーワードが“オシャレ”であってもいい。「缶コーヒーってオシャレじゃないよね。だってゴミが出ちゃうもん」というように、目的がファッションであろうが自社の利益であろうが、それがグリーンにつながっていけば、それでいい。入り口へのアプローチはさまざまだと思います。
——いろいろな立場から、それぞれの方法で、グリーンを考えればいいのですね。

僕は正面切ってグリーンを語るほど道徳人じゃないと思っています。でも、まず経営者として見たとき、いろんな問題が自然と見えてきます。「どうしてこんなにゴミが出るの?」「どうして誰もいないのに暖房が付いてるの?」など、気づくことが多い。やっぱり“ムダ”は、コスト的にも環境にもよくないですよね。そして、次に美容師の目線で見たときは、また違った問題意識が起こってきます。「シャンプーはオーガニックの方がいいよね」「カラー剤で髪にいいものはないかな」と。キレイな水がキレイな髪をつくると思えば、排水の問題も気になるし…、といった見方も出てきます。
こんなふうに問題意識はどこから始まってもいい。大上段から環境問題を語るのではなく、自分の置かれている立場や日常に目を凝らすと、いろんなことが見えてくるはずだから、そこからグリーンに意識を持っていけばよいのだと思います。大切なのは、生活者一人ひとりが街や環境を守ろうとする気持ち。その気持ちが集まれば、佃島が持っているような街のチカラが自ずと生まれてくるのではないでしょうか。

小松 敦 氏
Atsushi Komatsu

1993年、渋谷にHEAVENSを設立。アグレッシブなヘアデザインで注目を浴びJHA受賞 。一般誌、業界誌、広告におけるヘアデザイン作成や国内外でのヘアショー、デモンストレーションセミナーなどのステージワークを行う。最近では独自のデザインスキルやマネージメントでプレゼンなどのトークセミナーから、フォトシューティングセミナーも全国で開催。各地で開催されるコンテストの審査員も多く担当。他に大手化粧品メーカーの製品企画アドバイザー、シザーやブラシのプロダクツ企画などサロンワーク以外でも活動。

教えてください
<佃島の路地文化>小松さんが日常の中でグリーンを感じる瞬間
僕は山形で大自然に囲まれて育ったから、子ども時代はそれらがごく当たり前の光景でした。それはそれでいい記憶として残っていますが、大人になった今は、むしろ佃島のように、都会にありながら生活の場が“自然体”で美しい街に心魅かれます。

<佃島の路地文化>
佃煮で有名な佃島では、多数の給水栓に守られて江戸開府以来の路地文化が引き継がれてきた。最近はさらに、それらの空間を未来に残そうと「路地裏再生計画」も行なわれている。
(グラスルーツ 編集部)

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