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原宿のサロン、pizzicato(ピチカート)の代表であるEBINA氏は、ヘアケア製品やオリジナルシザーの開発に携わったり、6月に初めての単行本を発刊するなどサロンワーク以外でも多忙を極めている。そんな彼が自身のエネルギーをチャージできる時間とは?

サロンワークともつながる釣りのプロセスが好き。

——EBINAさんは釣りやキャンプが趣味だそうですね。大変失礼ですけど、初めてお聞きしたとき、意外な感じがしました。

よく言われます(笑)。都心で夜遊びしているようなイメージなんでしょうか…。確かに以前までは、店は原宿、自宅は表参道なので、狭い街の中をちょろちょろ移動するような、そんな生活でした。でも、いつからか、街の中にいると自分自身がスイッチをオフにしづらくなったと感じるようになったのです。休日であっても心はオンのままという状態で。完全にオフにできないからリセットもできない。だから、街から少し距離をおいて自然の中に身を置いてみたいなと。都内にこもって同じフィールドの中で暮らしていくのはちょっと淋しい。僕は足を伸ばして自分のフィールドを広げようと思ったのです。

——それで釣りやキャンプを始められたのですね。アウトドアでもいろいろあると思うのですが、なぜ釣りだったのですか?

サーフィンとかも誘われたことはありましたが、ハマったのは釣りでしたね。最初はルアーを使う渓流釣りから始まり、今ではほとんどが海釣りです。きっかけは、ただ単純に面白そうだったのと、気分転換にはちょうどよいかなと。でも続けるうちに、その深みにハマっていったというか(笑)。当然のことながら、釣りって「じゃあここで魚を釣りましょう」と言ってすぐに始められるものではありません。魚についていろいろ調べたり、道具をそろえて手入れをし、エサを買いに行って、それらを車に積んで、着いたら竿にエサをつけて…と、いろんなプロセスがあります。僕はたぶん、そうしたプロセスが好きなんでしょうね。
サロンワークと似ているなとも思います。カウンセリングをして、お客さまのスタイルに合わせてロッドなどの道具を準備して、カラー剤を調合したりカラーチェックをしたり、たくさんのプロセスを確認しながらこなして、その結果ひとつのスタイルが完成する。サロンワークも釣りも、ものをつくるわけではないけれど、ていねいに手順を踏んで一つひとつつくっていく感じが大事なのだと思います。職人さんによるものづくりのような。しかも釣りは魚を釣ることだけが最終目的ではなく、それをさばいて食するというプロセスや楽しみもあります。スーパーで魚を買うと、そのプロセスの部分が全部抜け落ちてしまいますよね。そうそう、後片付けも重要です。釣りが終わったら、釣り糸やゴミなどを片付けてササッと掃除もします。釣り糸に絡まってしまう鳥も多く、環境問題のひとつにもなっていますからね。

スイッチを完ぺきにオフする時間を大切に。

——釣りはいつも一人で行かれることが多いのですか?
だいたいは一人ですが、スタッフと一緒に行くことも時々あります。僕自身、若い時にサーフィンとかに誘われて、正直言って面倒だなと思ったこともありましたが、実際に行ってみると気持ち良くてリフレッシュできたものです。体が疲れているから休みの日は寝ていたいという人も多いでしょうけど、体の疲れは何とでもなります。
僕なんか少しぐらい睡眠時間が短くなっても大丈夫。夜中に目が覚めたら、そのまま音楽を聴いたり映画を見たりして過ごす。そうした時間も心地よく感じられるものです。危ないのは心の疲れですよね。現代に生きる僕たちはさまざまなストレスにさらされていて、心の病気になる人も年々増えています。
特に、僕たち美容師の仕事は接客業で、しかも毎回が真剣勝負ですから、精神的にも結構疲れるんです。長年担当させていただいているお客さまでも毎回緊張していますから。逆に、この緊張感が大切なのだと思いますけど。
お客さまとはどんなに親しくなっても入りすぎることなく、適度な距離感を持つことが求められます。いつ来店されても同じように接することができて、しかもどのお客さまにも同じトーンで接客できる、それが理想です。だけど、マラソンでいったら同じペースで走り続けることで、それもつらいものがあります。だからこそ、スイッチを完ぺきにオフにして充電する時間が必要なのですね。
釣りに行くときは、車での移動時間も自然とスイッチがオフになるので大切な時間です。だから、できるだけ遠くに行くようにしています。そして海の上で、風を肌に感じながら潮の香りをいっぱいに吸い込んで、いろんなことを考えたり、もしくは何も考えずにボーっと釣り糸を垂らす。そんなふうに自分自身を見つめることができる、この贅沢なひとときは、何物にも代えられませんね。

——最後に、このサロン業界からグリーンを発信していくことについて、どのように思われていますか?

僕自身が環境にいいことを何かしているわけではないけれど、たくさんのお客さまと接する仕事だから、人に何かを伝えられる仕事だから、いろんな広め方ができると思います。いまパクチーを栽培しているのですが、グリーンを育てることで心のゆとりが生まれ、周りにやさしくなれたり、見えなかったものが見えてきたり、グレーだったものがグリーンに見えることもあると思います。そのゆとりがお客さまに伝わり、それがまた他の人へと伝わっていく。そんなふうに少しずつでいいから気持ちを伝えることで、さまざまな活動につながっていくことができたらベストですよね。

EBINAさんが日常の中でグリーンを感じる瞬間

店内のセット面の間に観葉植物のエバーフレッシュを置いています。
ネムの木の仲間で、夜になるとまるで眠っているかのように葉を閉じて、昼間開きます。
ああ、生きてるんだなぁと改めて実感。心が癒されますね。

EBINA氏
pizzicato代表。山野美容専門学校卒業後、青山のサロンZACCでディレクターを務めた後、2001年11月にpizzicatoを設立。2008年2月に店舗を拡張。“少女から大人の女性へ、大人の女性には知的なかわいらしさを“をコンセプトとし、再現性のもとに毛流や髪質に対してのカット、パーマを得意とする。現在サロンワークのかたわら、一般誌、業界誌、講習活動、最近では特許取得のオリジナルシザーやアウトバストリートメントの開発にも力を注いでいる。

http:// www.pizzicato.jp/
(グラスルーツ 編集部)

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