takashi_kuribayashi

国内外問わず、数々の個展や展覧会に出品し、高い評価を得ている現代美術作家の栗林隆さん。
作品をつくる傍ら、時間があれば波に乗り、チャンスを見つけては海にもぐる生活を送っている。
サーフィンやスキューバダイビングは、彼にどんなインスピレーションを与えているのだろうか?

取材・編集:嘉村真由美(ASOBOT)
写真:小原太平

−−世界中でエコや自然環境への関心が高まり、定着していますが、栗林さんはそうした流れについてどう感じていますか?
K どんなジャンルでもそうだけど、何か流行ると瞬間的にストイックになりすぎる人が多い気がするよね。だけど時間がたつにつれ、そのブームの本質がだんだん見えてきて、自分が信じていたものに裏切られてしまうような…。そうならないようにするためには、「自分がここにいる意味」みたいなことを基本において考えればいいんじゃないかな。

−−具体的に言うと?
K 自分がここに存在している、生きているっていうのは、誰か自分以外の人がいて、その人たちのおかげでここまで来られたわけじゃない? だからといって「みなさんのおかげです。みなさんのために…」なんてそれぞれ言い出したらきりがない。「自分がここにいる意味」を周りに感謝しながら、みんなが一人ひとり自分の中で考えていけば、自然と心地よい世界になると思うんだよね。人間関係もそうだし、もちろん環境についてもね。

−−そういう考え方はなかなか難しいかもしれませんね。みんな自分のことで精一杯で・・・
K そうかもしれない。でも、”共存の仕方”を間違えると誰かを傷つけることになるし、それは巡って自分を傷つけることにもなる。だから、自分ができる範囲で、自分のためにも何か行動を起こすことが大切なんじゃないかな。海やフィヨルドや大自然の中にいると、自分の小ささを感じるよね。その圧倒的な大きさの中で自分がどうしたいのか、そんなふうに瞬間的に感じたことを大事にしていきたいですね。

−−「表現する人」として、自然とのつきあい方はどう考えていますか?
K 海が好きだから、自然(nature)は自分の生活そのものと切っても切り離せない。ただ、。自分の場合はアーティストとして、世の中を客観視する姿勢でいたいから、「人工的な俗っぽさ(pop)」と「自然さ(natural)」を両方大事にしたいです。

−−作品の中には苔や草木、ペンギンやアザラシを登場させていますよね?
K 自分の作品は「境界」がテーマ。いろんな場所や、ことがらや、気持ちなど、様々な境界を表現するときにこれらを登場させることで、普通に生活している人たちが境界を意識するきっかけになるかな、と思って。制作する自分の気持ちがすんなり入るモチーフとしても作品の中に置いています。
−−以前、鎌倉から出発してサーフィンしながら青森の六ヶ所村まで行く、『WAVEMENT』というサーファーのプロジェクトに参加されていましたよね。
K 参加のきっかけはたまたま。でもその趣旨に共感したし、プロジェクトが進行している10日間はみっちりサーフィンができるかな、なんてそんな簡単な動機です。自分は運動家ではなく、ただのサーフィン好きなアーティストだからね。

−−参加したことが、その後の作品に影響を与えたりしましたか?
K それはない。やっぱり自分の作品や周囲に対して客観視することは大事だから。客観視しながら、自分で自分のアーティスト像を見つけようとしているって感じかな。「誰みたいになりたい」とかは全然思っていない。アーティストであるならば、年齢も国籍も関係なく、同じ土俵に立っていると思う。それは他の職業でも言えるかもしれないけどね。いずれにしても、何かを盲目的に信じ込んでしまうよりも、自分にとって何が必要なのかを見極める力をつけることの方が、自分を立たせる上で大事なんじゃないかな。

栗林 隆 TAKASHI KURIBAYASHI

現代美術作家。1968年長崎県生まれ、逗子在住。1997年プロジェクトグルッペ・ストッフベクエル(カッセル、ドイツ)に参加、2003年ケルン市立美術館・アートテーク(ドイツ)にて個展。国外ではドイツを中心にオランダやアメリカでも活躍。自宅もアトリエも海のそばにあり、ダイビングはインストラクターの免許を持つほどの腕前。

<Himmeloberfläche(空面)>
2004年 KuKuKu(ドイツ)

<ゼーフント・ヒロシマ/アザラシ・ヒロシマ>
2004年 広島現代美術館
(グラスルーツ 編集部)

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