森と海

森は海を慕い、海は森を慕う

The forest is longing for the sea,
the sea is longing for the forest.
森・里・川・海を一つの大きな生態系としてとらえ、
保全することは、有機農業の原点。

畠山 重篤さんは、宮城県気仙沼湾で
カキやホタテの養殖をしながら、
「森は海の恋人」をキャッチフレーズに、
地元の漁師の方々と共に
植林を行うユニークな活動で知られています。
毎年続けてきた“山に大漁旗がはためく”植樹祭は、
今年の6月で29回目を数えました。

 

山に登り、樹を植え始めた漁師たち

高度経済成長期で日本が活気づいていた1970 年前後から、
気仙沼湾では海苔の生産量が急速に減少し、
ホタテが死に始め、赤潮を吸ったカキの身が
真っ赤に染まっていました。
沿岸からは小魚や小動物が姿を消し、
河口に集まっていた天然ウナギも
まったく捕れなくなったそうです。

「私は若い頃から、 様々なカキの産地を訪れて
視察をしていました。そして、 沿岸漁業の衰退は、
そこに注ぐ川の流域の環境悪化に
よるものであることに気づき始めたのです」 と畠山さん。

「原因は、 工場排水、 農業排水、 家庭排水、
農薬・除草剤・化学肥料の使い過ぎ、
森林の荒廃など多岐にわたります。
特に河口堰やダムで川をせき止めると、
あっという間に海が荒廃するのを
この目で確かめてきました。
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そして、気仙沼湾に注ぐ大川流域も
同じような問題を抱えていました。
河口からわずか8km地点に新月ダムを建設するという計画が
発表されたのです。
これは致命的なことになると直感しました。
海の汚染だけでも大問題なのに、
河口近くにダムが建設されてしまっては、
海が枯れるのは目に見えていたからです」

「じっとしていては何も解決しない、
ここは腹を決めて自分達でやれることをやってみよう」。
そう考えた畠山さんは、 気仙沼湾に注いでいる大川の上流に
広葉樹の森を作ろうと呼びかけ、
賛同してくれた漁師さん達と共に「牡蠣の森を慕う会」
(現・NPO法人 森は海の恋人)を結成しました。

NPO

 

さらに、 より多くの人の理解を得るためには
科学的な裏付けが必要だと考え、
力を貸してくれそうな学者を探し回った末、
当時、北海道大学水産学部教授だった
松永勝彦氏を訪ねたのです。

畠山さんはそこで、 「海の食物連鎖の基となる
植物プランクトンの生育にはフルボ酸鉄が不可欠であり、
それは森の腐葉土層に含まれている」ことを学びます。
その後、気仙沼湾を訪れた松永教授の調査により、
カキやホタテの養分の90%が川からやってきていることも
明らかになりました。

科学的な根拠を得た畠山さん達の活動は、
それ以降、 多くの賛同者を得てどんどん拡大。
その活動が中学3年生の学校教科書に掲載され、
全国から注目が集まったことも追い風となり、
新月ダムの建設はついに中止となったのです。

川が繋ぐ、森・里・海の循環

いま、オーガニックが大きなうねりになりつつあります。
有機農業の原点とは、環境を守り、
持続可能な社会を作ること。
そのためには、森・里・海、そしてそれらを繋ぐ川を含めた
大きな循環に目を向け、その繋がりを大切にした地域作りを
行う必要があります。

そして、そのことを、畠山さんは海に生きる漁師としての視点から
理解しました。森が海を育て、海が森を慕う。
その繋がりを、「森は海の恋人」という分かりやすい言葉で
表現し、保全活動を精力的に推進していったのです。

植樹祭

東日本大震災では養殖施設のすべてを失うとともに
家族を失う不幸にも見舞われましたが、
全国の支持者からの支援を得て養殖業を再開。
現在は、自然環境を活かした地域の再生や、
子どもたちへの環境教育にも力を注いでいます。

ちなみに、この記事のタイトルにもある英文は、
「森は海の恋人」のコンセプトを英訳したものであり、
訳するにあたっては
、畠山さんの活動に注目してくださっている
美智子皇后陛下からのアドバイスがあったということです。

 


オーガニックライフスタイルEXPO では下記、開催します。

「オーガニックフォーラムシンポジム映画上映」

畠山 重篤さんが出演しているドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第八番』を上映。

[日時] 7月28日(金)11:00~13:00

[ 場所 ] D7ホール [ 入場料 ] 1,000円


「有機農業の原点を語る2〜川が繋ぐ、 森里海の循環〜」

畠山 重篤さんのトークイベント。
渡邊 智恵子氏((株)アバンティ 代表取締役社長)
徳江 倫明 氏((一社)オーガニックフォーラムジャパン 会長)

[ 日時 ] 7月30日(土)13:30~15:30

[ 場所 ] 展示ホールE・メインステージ


畠山 重篤氏 はたけやま・しげあつ

1943年生まれ。 養殖漁業家・エッセイスト・NPO法人森は海の恋人 理事長・京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授。 1989年、 「森は海の恋人」を合言葉に植林活動を開始。 以来、 漁師の目線で森・川・海の繋がりの科学的メカニズムを追い続けるとともに、 講演・執筆・環境教育なども精力的に手がけている。 朝日森林文化賞・緑化推進功労者内閣総理大臣表彰・国連森林フォーラム(UNFF)「フォレスト・ヒーローズ」他、 受賞多数。

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(グラスルーツ 編集部)

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